「凶乱令嬢ニア・リストン~病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録」(原作:南野海風 イラスト:磁石)はHJ文庫(ホビージャパン)より発売中のライトノベル作品です。
重い病を患い幼くして亡くなった幼い少女に、武人の魂が宿ったことから物語は始まります。
主人公はニア・リストン。アルトワール王国リストン領で暮らす少女です。
物語に登場するニアは、本来のニア・リストンではなく、別人の魂が宿った存在となります。
その人物は恐ろしいほどの力を持った武人だったらしく、”気”を操って自力で病を治すほど。
武人はニア・リストンとして生きることを受け入れ、ここから彼女の物語がはじまります。
武人の魂が宿ったニアはどうやって生きていくのか?
彼女の生きる世界はどんなところなのか?
筆者の感想もまじえてお答えします。
ネタバレをふくみますのでご注意ください。
あらすじ
4歳にして病でこの世を去ったニア・リストン。
ですが、彼女は再び目を覚まします。
彼女の中には別の人物の魂が宿っていました。
ニアの病を治すため、彼女の両親が雇った人物が反魂の法で別の魂をニアの身体に宿らせたのです。
その人物は自分が謝礼を受けとって去るまでの時間稼ぎのつもりでした。
しかし、ニアに宿った魂は常識を超えた強さを持つ武人の魂でした。
”気”を操ってニアを蝕んでいた病を治し、少しずつですが回復していきます。
回復する中で自らの置かれた環境を知り、現状を受け入れた武人はニア・リストンとして生きていくことを決めます。
ここからニア・リストンの新しい人生がはじまります。
世界観
大地が海から離れ浮島と呼ばれる状態になっている世界。
浮島の生態系はバラバラで、魔獣なども数多く生息しています。
また、浮島にはダンジョンもあり、調査・探索が行われています。
魔獣の討伐などを行う冒険家も存在。
魔法も存在しており、それをもとにした技術も普及しています。
用語
アルトワール王国
ニアが暮らす国。
王政で王を一位とした階級制度が存在します。
階級は全部で十五位まであり、十二~十五位が庶民、十一位からが貴人(=貴族)となります。
貴人は浮島の管理も任されています。
ニアの実家、リストン家は第四階級貴人で大小合わせて17の浮島を所有。
第四階級は十家もないそうなので、かなり高位になります。
魔法映像(マジック・ビジョン)
魔法を使って遠くの映像を映し出せる技術(要はテレビ)。
リストン家は魔法映像配信チャンネルの製作運営会社の経営をしています。
まだまだ新しい技術で放送チャンネルは、王都とリストン領の2つのみ。
ニアの両親は魔法映像の可能性を感じて早期に参入しますが、それと同時にニアの病を治す手立てを広く求めるという目的もありました。
魔晶板
魔法映像を流す端末。薄い水晶の板で指先の操作一つで画面が切り替わります(つまりはタブレット)。
製作コストが高く、一部の富裕層しか持っていないのが現状。
主な登場人物
ニア・リストン
主人公。物語開始当初では4歳。病を患って命を落とすが、別人の魂が身体に宿ったことで息を吹き返しました。
ニアに宿った魂は武人のもので、”気”を操る技術で命をつなぎます。
彼女はニアとして生きることを決意しました。
武に関しては間違いなく無敵。
ただ、なんでも武にからめて考え、物騒な思考をしています。
本物のニアが果たせなかった両親への恩返しの意味も込めて、魔法映像の広告塔として番組に出演するようになりました。
リノキス
ニアの専属侍女。アルトワール学院の冒険科を卒業後、その知識と技術を買われてリストン家に雇われました。
非常にニアを大切にしており、やや過剰ともいえる言動が目立ちま。
ニール・リストン
ニアの兄。母親譲りの整った顔立ちをしている。ニアからは将来女性を泣かせるだろうと推測されています。
それを裏付けるかのように、ニアと共に魔法映像に出演した後、ファンレターが届くようになります(ニアより多い)。
中にはかなり際どい内容のものもあったらしく、本人はややトラウマになっています。
リネット
ニール専属の侍女。リノキスとはアルトワール学院の同期。同じ冒険科で一緒にパーティーを組んだこともあったとのこと。
主であるニールに対してやや不穏な言動がみられます。
レリアレッド・シルヴァー
第五階級貴人シルヴァー家の四女。後にニアと双璧をなす「紅い偶像」と呼ばれる少女。
ユリアン・ロードハート
劇団氷結薔薇(アイスローズ)の座長。叔母であるライム夫人に頼んで、ニアに仕事を依頼します。
ルシーダ・ロードハート
劇団氷結薔薇の看板女優。ユリアンの双子の妹で男装の麗人。
シャロ・ホワイト
劇団氷結薔薇の新人女優。主役に抜擢されてやる気が空回り気味。
そんな彼女を心配して、ユリアンがニアに出演を依頼しました。
アンゼル
裏社会の用心棒。トラブルからニアと対峙する。
自在に呼び出せる鉄パイプが武器。
感想
無敵の武人が4歳の少女に転生!!
そう聞くと血沸き肉躍る戦いの連鎖を想像しますが、本作はちょっと違います。
確かにニアは非常に強く、現時点でもほぼ敵なしの状態にあります。
ですが、戦いのみというわけでなく、魔法映像に広告塔として出演しています。
これは両親への恩返しのためであり、リストン家が多額の出資を行っている魔法映像事業を成功させるためでもあります。
本来のニアができなかったことを代わりにやる。
それが今のニアの行動原理となっています。
そのため戦闘シーンより、日常の中での出来事や番組出演の話などが多くみられます。
それでも闘争をの世界を忘れたわけではなく、機会があれば喜び勇んで危地へ向かっています。
実際、ささいな諍いから、不良集団に関わったニア。
あっさりと彼らを叩きのめしますが、そこで終わらずに彼らに仲間を集めるように言い渡します。
このあたりにニアの常人離れした思考が見て取れます。
武に関しては狂気ともいえる一面を見せるニア。
日常生活ではまるで見せませんし、撮影の仕事を着実にこなし、仕事に関しては真摯に向き合っています。
この世界に彼女に勝てる人間は存在するのか?
いまのところ人外でも存在するかどうかは怪しいです。
彼女の今後の活躍を期待しつつ、今回はここまでとさせていただきます。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。